THE DEFINITIVE MERSEYBEAT
これをやらずに終われるか!
店主が決める

STRICT MERSEYBEAT 10選


HVを始めてから改めて気付いたのだが、私が一番好きなのはマージービートだ。一方的な押し付けになることは百も承知で、私が選んだ10曲を紹介する。‘STRICT MERSEYBEAT’とはヘンな言葉だが、厳密にリバプール出身のバンドによるマージービート、と理解して欲しい。

第1位

TOMMY QUICKLY
with THE REMO 4


「 Prove It 」
PICCADILLY 7N 35167

RELEASED : FEBRUARY '64
CHART : -

GERRY MARSDEN書き下ろし、マージービートによるマージービートのためのマージービート。マージービートの要素を全て備えた極上の1曲。マージービート・ブーム終焉の始まりくらいの時期のリリースだったが、ヒットするポテンシャルは十分にあった。しかし、ああ不思議なもんだねぇ、かすりもせず。‘PROVE IT’という言葉は、そのままQUICKLYへ突きつけられたタイトルだったと思う。


第2位

TOMMY QUICKLY
and THE REMO FOUR


「 Kiss Me Now 」
PICCADILLY 7N 35151

RELEASED : OCTOBER '63
CHART : -

ストリングスが加えられていることは男系ビート(店主造語)には珍しいが、PICCADILLYのスタッフやRAYMONDEにはQUICKLYのボーカルが頼りなく聞こえたに違いない。事実、彼の声は頼りない。この曲を聴くとなぜか目頭が熱くなるのだが、それはその声とストリングスが良い作用で惹き合っているから。メロディーはマージービートに典型的な甘くやさしいもの。1位にするか2位にするかすごく迷ったんだよ。

第3位

GERRY AND THE PACEMAKERS

「 I Like It 」
COLUMBIA DB 7041

RELEASED : MAY '63
CHART : #1

ついに真打登場。ブームの到来を決定付けた意義ある1曲は、作者と演者の抜群のコンビネーションによって生み出されている。作者のMURRAYが店主に語ってくれたことを改めて2点指摘しておく。
@前作「How Do You Do It」のヒットを継承すべく、意識的に同じく1オクターブ動くメロディーから曲をスタートさせた
AMURRAYが作曲者稼業に進むことを反対していた父だったが、「How Do You Do It」のヒットでノリノリになり、頼んでもいないのに「次の曲のタイトルは‘I LIKE IT, DO THAT AGAIN’がいいんじゃないか?」と言ってきた。最終的に曲名は縮めたものの、歌詞中に‘DO THAT AGAIN’を入れて父に謝意を示した。
王道中の王道、この曲が気に喰わないという人は、マージービートが根本的に肌に合わない人なので、なにか別の趣味を見つけたほうが良い。


第4位

BILLY J. KRAMER
with THE DAKOTAS


「 I'll Keep You Satisfied 」
PARLOPHONE R 5073

RELEASED : NOVEMBER '63
CHART : #4

63年といえども、ここまで甘いとビートルズは録音に踏み出せなかったか。いや、単にこの手のメロディーを歌わせるのにうってつけな仲間がいたからだったに違いない。ジョンとポールは気前よくあげちゃっている。イントロからエンディングまで全身とろけまくり、とくに‘YOU CAN ALWAYS GET A SIMPLE THING LIKE LOVE’のところの‘A’で1オクターブ下がってまた元の音に戻るところなんて芸術的にスウィート。そしてピアノと絶妙に絡むソロ・ギター・パートで昇天。罪な曲だ。


第5位

THE SWINGING BLUE JEANS

「 You're No Good 」
HMV POP 1304

RELEASED : MAY '64
CHART : #3

このチャートでは異色のランク・イン。POPで明るいメロディーを持たない、私が言うところの‘THE HARD SIDE OF MERSEYBEAT’からの1曲。アメリカのDEE DEE WARWICK、BETTY EVERETTが歌っているが、ヒットしたEVERETTのバージョンをカバーしたもの。「Hippy Hippy Shake」、「Good Golly Miss Molly」に続けてヒットが欲しかったレーベルは他の曲の録音を強要するも、メンバー自身が自分達の意見で押し切って結果を出した名カバー。いつ聴いてもこの演奏、声にはゾクゾクさせられる。


第6位

TOMMY QUICKLY
and THE REMO 4


「 Forget The Other Guy 」
PYE 7N 15708

RELEASED : OCTOBER '64
CHART : - (A SIDE #33)

彼等唯一のチャート・シングルのB面に大名曲が。PICCADILLYからPYEへレーベルが変わっての第一弾だがなんと5ヶ月ぶりのリリース。‘英ロック界最初のシャブ中’である彼は、きっと何がしかの問題を抱えていたに違いない。事実、このちょっと後には旧友のジョンとポールが彼のために書いた「No Reply」の録音を彼等同席の下PYEスタジオで試みるも、ボロボロで結局録音できず。そんな彼が歌うんだぜ、この曲を。REMO 4もよくついてきてくれた。涙無くしてはとても聴けない。


第7位

THE FOURMOST

「 Waitin' For You 」
PARLOPHONE R 5128

RELEASED : APRIL '64
CHART : - (A SIDE #6)

ヒットした「A Little Loving」のB面曲。ヒット曲とのカップリングだったことで入手が容易であることに感謝。かなり底上げして言えば、「I'll Follow The Sun」と同系統。こういうアコースティックなやさしい曲調というのもマージービートの一側面。映画‘FERRY CROSS THE MERSEY’のサントラに収められている「I Love You Too」も似た曲調の大名曲。A面曲ではメンバー自作の曲が取り上げられることは無かったけれど、こういうB面に収められたオリジナル曲がキラリと光るバンドはいい。

第8位

BILLY J. KRAMER
with THE DAKOTAS


「 From A Window 」
PARLOPHONE R 5156

RELEASED : JULY '64
CHART : #10

BILLY J.が録音したLENNON-McCARTNEYの曲としては6曲目にして最後。L-Mが書いた甘い曲としても最後か。どうしょうもなくスウィートで、BILLY J.のヤサいボーカルがじつに合っている。それまでのシングルは全てTOP5入りしていたことを考えると最高位10位というのはまったく期待はずれだが、この手の曲のリリースとしては64年の夏は遅い。63年のうちにリリースされていれば…、と思わずにいられないが、63年は63年で名曲のリリースが詰まっていたから、ムリな注文なのだが。


第9位

TOMMY QUICKLY
with THE REMO 4


「 It's As Simple As That 」
PICCADILLY 7N 35183

RELEASED : MAY '64
CHART : -

トミーの残した音源は12曲。全曲良い。この曲は4枚目の「You Might As Well Forget Him」のB面曲。明るくPOPであるというマージービートの重要要素をこれ以上に楽しめる曲は無い。なにしろトミーのキャラが存分に活かされているのだから、A面にする選択もあったのではと思う。作者のBRAD NEWMANはHVが注目するマージービート期の重要なライター。トミーはさらに上位への登場をうかがう。


第10位

THE SWINGING BLUE JEANS

「 Promise You'll Tell Her 」
HMV POP 1327

RELEASED : AUGUST '64
CHART : -

哀愁漂う曲調と重厚なコーラス。ほんの数年前まではこのような曲にエレキ・ギターは似合わなかったのだが、それを極上の音楽に昇華させたのがマージービート。演奏もバッチリ、もう言うことはない。この曲自体は同じリバプールのバンドTHE KINSLEYSの音源に歌詞と曲名が異なるもののまったく同じメロディーの曲が存在するので、おそらくマージーサイドで知られた作者不詳のものだったのかもしれない。それをメンバー4人名義でリリースしたなら、リリースしたもの勝ち。ただし、64年後半にもなると、こういう甘めのビートは時代遅れになりつつあった。


RETURN TO TOP